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ペントラルゴ 〜忘却の頌歌〜

序章

聖なる国ペントラルゴ。世界各国から信者が訪れるその国は、女神ルイースフェルの血と力を継ぐ法王が支配する奇跡の国。だが歴史を紐解くと、輝かしい国にも忌まわしき過去が存在する。

今では誰もが忘れてしまったが、「死者の魂が変じた化け物・・・レグレットが、徘徊するようになったことが物事の始まりだった」と伝えられている。嘗ての国を運営していた聖職者達が無能だったのか・・・。対策を講じるためにレグレットを退治する官師(かんし)を育成するに止まらず、生ある人々から死者の記憶、思い出を消す想師(そうし)という集団をも結成、多くの記憶を消していった。

なぜ、このような恐ろしいことができたのか。

女神の力、聖創力(せいそうりき)なる人知を超えた力による悲劇と言えばいいのだろうか?

「レグレットになって退治されていく人を見て心を痛めないように、死者の記憶を抹消し、人々の精神を正常に保つ」という名目から、二十年にも及ぶ長い間、国民は死を忘れて生活していたという。

そして、後世の人々は、その正常政策が行われた時代を「忘却の二十年」と呼び、空虚で恐ろしい時代であったと後の世で語るようになった。いったいどのような時代だったのか?詳しく記された書籍は存在していない。ある凶悪な事件が政策廃止の契機となったそうだが、真実が公開されることはなかった。

歴史に埋もれ、時代は過ぎ去った。この事件の関係者であり、被害者でもある当時の少年が書き残した唯一の書籍も紛失している・・・・・

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